以下の記述は『スタンランの世界』(須長康一さん著)からの引用です。
1914年、第一次世界大戦勃発とともに、ヨーロッパ社会は暗い時代へと突入した。ベル・エポック期のパリを拠点として、庶民の生活に目を向け、多くの作品を描いてきたスタンランは、戦争の真実を伝えるために、許可を得て、最前線の地を訪れている。そして戦争に翻弄される人々の姿を正確に描き出した一連の版画を発表した。 スタンランが主に取り上げたモチーフには、戦火に逃げまどう人々、家財を失って途方にくれる母子、束の間の休息をとる兵士の姿など、スタンラン独特の視覚から写し取った素描であり、具体的な戦闘場面を描いた作品ではないが、戦争の悲惨さや不条理さを伝える点で、少しも遜色がない。 雑誌『ゲール・ドキュマンテ』誌と『ラール・エ・レ・ザルティスト』誌では、スタンランが描いたこれらの戦争画が取り上げられ、特集されている。戦争に翻弄される人々の苦しみや悲しみに、深く思いを寄せたこれらの戦争画は、スタンラン晩年の活動を特徴づける作品と考えることができる。 |
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「駐屯地で」 |
「Bat-d'af」 |
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「迷い犬」 |
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「家なき子」 |
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「さまよい」 |
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私が伊勢崎市赤堀歴史民俗資料館の展覧会「スタンランの世界」を見学した時、特に印象に残ったのは戦争画でした。 歴史民俗資料館の2階の展示室に向かうと、入口正面の壁に1枚ポツンと飾られたモノクロの兵士の絵。「あれ、何で兵士の絵が?」とその絵の意味が分からないままメインの展示コーナーへ移動すると、そこにはスタンランの名を有名にした猫をモチーフにした何枚かの絵。それらを鑑賞しながらも、頭の隅は先ほどのモノクロの兵士の絵が占めていました。 後日、スタンランの戦争に対する姿勢は、須長康一さんが著した『スタンランの世界』で知ることになりましたが、戦争の渦中に身を置きながら、兵士や翻弄される市民の姿を通じて戦争の愚かさを伝えた強い意志と勇気、おこがましくも我が身と置き換えて、身の引き締まる思いでした。(2010/2/20 記) |
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「子供」 |
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「母と子」 |
「母と子」 |
「ロバと子供」 |
「帰還許可」 |
「未亡人」 |