群馬県道・前橋館林線の伊勢崎・東本町の交差点の少し西側にお堀が流れています。小さなお堀で、水量も少なく、車で通過する場合にはほとんど気付かれることはないでしょう。 このお堀に気を留めたのは、ある日のサイクリングの途中、何気なく覗いて見ると水の流れが北へ向かって流れていたためと堀の側壁がコンクリートでなく石積みになっていたためです。伊勢崎市内では赤城山の緩やかな勾配を背に受けて、多くの流れが北から南、西から東へ向かって流れるので、この堀を見た時には少なからぬ驚きがありました。 近くに誰かがいれば、誰彼を捕まえて「知ってましたか?この川、反対に流れてますよ!」と話しかけていたことでしょう。車社会の伊勢崎市、残念ながら東本町辺りで歩いている人に行き会う機会は少なく、その驚きはいつしか記憶の底に沈んでしまいましたが、今回、当サイトの掲示板への書き込みがきっかけで、この堀が史跡長尾館の外堀で、逆方向に流れる事から「逆堀(さかさっぽり)」と呼ばれている事が分かりました。(2010/9/5 記) |
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史跡長尾館外堀(逆堀)の地図 |
階段と堀周辺整備後の逆堀(分秒) 2015/11/6 |
先日9月13日、粕川サイクリングロードを走り、境三ツ木の彼岸花の里へ向かった日、久々に逆堀の脇を通ると、「あれれ?何かの工事をしてる?!」 自転車を堤防に停めて下りてみると、ご覧のように堀の脇が整地され、石の踏み石が並べられています。案内板も移設され、通路が広がっています。防護柵の支柱用と思われるコンクリート基礎が埋められ、間もなく完成する様子です。工事が始まる前には、屋敷の大きな木立と粕川の堤防に囲まれた、ちょっと薄暗い場所でしたが、アイボリー色の舗装材で覆われ、白い踏み石が配された通路は明るく、以前よりも訪れ易くなりました。(2014/10./4 記) |
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通路整備などが進む逆堀 2014/9/13 |
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アイボリー色の舗装材、白い踏み石が配された通路 2014/9/13 2014/9/13 |
粕川堤防から下る階段 2014/9/13 2014/9/13 |
2011年9月25日、「いせさき市民のもり公園」で行われた市民緑花フェアの日に、たまたま伊勢崎市議会議員の堀地さんと会い、あれこれとお喋りした時、「逆堀がきちんと整備されましたよ」と教えていただき、以来、心のどこかに気に掛けていながらなかなか改まって訪れてみる機会がなく、11月13日、境産業祭の日に粕川サイクリングロードを走りながら急に思い出し、寄ってみることにしました。 思えばこの間の7週間、粕川サイクリングロードは何度か走っているのですが、逆堀がある右岸側サイクリングロードは国道462号を橋の上で横断するのが危険なので(そもそも横断歩道はありません)、無意識の内に避けていたようです。 現地の堤防斜面には、以前の朽ちた木製階段が撤去され、鉄筋コンクリート製の擬木階段が整備され、堀の周囲の下草や小さな雑木が伐採され、西側の個人住宅との間の空き地に生い茂っていた雑草も刈られて、ちょっとした広場が姿を現していました。 以前ならば、階段を下りて暫くの距離を歩くと、生い茂る雑草や雑木に阻まれて奥まで入る勇気はなかったのですが、今回は、太田県道側を見通せる地点まで何の障害もなく入ることができました。更に、西側の個人住宅の前に狭いながらも小路があって、そちらからも入って来れる事に気が付きました。 街中に茂るこんもりとした緑と山中の峡谷のような雰囲気に思わずをペダルを止めて魅入ったのが1年半前。今回の整備で、また多くの人に知れ渡るようになれば、喜ばしいことと思います。 太田県道側との交差部からの南北方向の流れの周囲は歩ける雰囲気ではありませんでしたが、いつの日か、堀の全区間の脇を遊歩道が整備される事を期待しつつ。(2011/11/28 記) |
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北西角から東方。左の斜面は粕川右岸堤防。 2011/11/13 北西角から南方。この延長に太田県道。 右側(西側)の石積み護岸の上をどうにか歩けそう。 2011/11/13 逆堀の西側の空き地。右側の土手は粕川右岸堤防。 2011/11/13 |
以前の朽ちた木製階段が撤去され、 鉄筋コンクリート製の擬木階段が整備されました。 2011/11/13 階段を下りた位置から。左の緑は史跡・長尾館 2011/11/13 堤防と平行に流れる区間 2011/11/13 下草や雑木を伐採し、石のベンチが姿を見せました。 2011/11/13 北西の角。ここで直角に折れます。2011/11/13 |
逆掘の現地に立つ案内板が今年(H24)の1月に新しくなりました。以前の案内板は現地で目を凝らしても、またデジカメで接写撮影してパソコンの画像ソフトであれこれ手を加えても判読困難で、このページでも紹介できずにいましたが、先日、この案内文を記した殖蓮史談会の星野正明さんと会った時にその話題を出した所、「新しくなりました」と教えていただいたので、早速に写真を取りに行って来た次第です。 話のついでに、星野さんに「西側の南北のお堀脇に、太田県道と粕川を繋ぐ遊歩道ができるといいですね」と話題を振ったところ、「その計画もありますから」と、嬉しい返事が返って来ました。現在は粕川サイクリングロードから階段を降り、お堀脇を少し歩き、空き地まで行って戻って来るしかありませんが、この遊歩道ができれば、太田県道(前橋-館林線)〜逆掘〜粕川サイクリングロード間の自由な往来ができ、見学に変化を付けることができ、逆掘の知名度も上がることと思います。(2012/3/14 記) |
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[ 記事の部分を拡大 ] 2012/3/12 新しくなった案内板(中央右)と逆掘 2012/3/12 |
案内板(中央後方)と粕川サイクリングロード(右)を繋ぐ階段 2012/3/12 以前の案内板。残念ながら字が薄れて判読困難です。 2011/11/13 |
今回の「逆堀」記事掲載後、Suh san こと元伊勢崎副市長・鈴木宣男氏から下記のメールをいただきましたのでここに紹介します。この逆堀改修事業に関するエピソードで、大先輩として仰ぐSuh sanが担当されたこと、その偶然に驚き嬉しく思いました。
●以下、Suh sanからのメール● 「逆堀」 の記事と写真を拝見致しました。僕が土木課長(平成5年4月拝名)の頃に地元から陳情があって改修のお手伝いをさせて頂いた堀なので懐かしく見させて頂きました。長尾館の外堀をコンクリートブロックで作るのは忍びないので、予算は余計にかかりますが自然石で計画しました。丁度その頃、当時の万場町(平成15年の合併で神流町・かんなまち・になりました)の石材業者が売り込みに来て、神流川流域の石を購入しました。その時の石材業者の営業担当者は後に万場町長に就任する宮前鍬十郎さんでした。 狭い水路幅ですから石の搬入に苦労した事を良く覚えています。石も数十年の時を刻んで良い感じになって来たかと思います。 水の取り入れ口は東本町の「伊勢崎平成イン赤城」の東側の水門で、水量をコントロールしています。なお、改修事業は平成6年7月に完成しました。 ちなみに逆堀の水源はJR両毛線の粕川鉄橋(今は高架ですが)の下の堰から取水して、伊勢崎工業高校の東を南進、東本町を東進し、粕川公園南一帯を潤おす「東田用水」です。 当時は伊勢崎佐波医師会病院の東側は田んぼ地帯が広がっていて、のどかな田園風景でした。僕が伊勢崎市役所(昭和37年入職)に入る前に1年半ほどお世話になった「伊勢崎東部土地改良区」の事業で土地改良・耕地整備が施工されました。 誰も見向きもしない逆堀に何十年ぶりにスポットライトを当てて下さってありがとうございました。(2010年9月6日) ※Suh sanの郷土芸能|Isesaki SMC Big Band |
殖蓮史談会が建てた案内柱 県道近くに立っています。 2010/8/28 南から北へ向かって流れる 逆堀(さかさっぽり) 河床と側面が石積です 2010/8/28 |
この先、更に下って 粕川に向かいます。 2010/8/28 |
粕川サイクリングロードから眺めるお屋敷の緑 2010/8/28
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渓谷のような雰囲気 2010/5/22 |
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国道462号沿いのノコギリ屋根の工場 2010/8/28 |
お屋敷の新緑 2010/5/22 |
書籍・「東本町の歴史」の紹介 |
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今回、史跡長尾館外堀の記事を書く過程で、現地に立つ標識が殖蓮史談会によって立てられた事を知り、私も所属している「伊勢崎市景観サポーター」のメンバー仲間であり、殖蓮史談会のメンバーでもある重田さんと星野さん(殖蓮史談会の代表)に色々教えていただき、その結果、長尾館を含めた東本町の歴史を調べた書籍・「東本町の歴史」が発行されている事を知りました。 その書籍の中から一部抜粋をお送りいただきましたが、その記述の中には、下植木城や長尾館、当時の東本町の街づくりの様子、 赤石城や那波城、太田金山城など周辺のお城の城主とも密接な関係があったこと、 武田信玄や上杉謙信、稲垣長茂らとの関係、長尾氏のこと・・・などなど 歴史ドラマを見ているような記述があって、興奮と感動を同時に覚えました。右記がその書籍です。(2010/9/17 記) |
■タイトル「東本町の歴史」(100ページ余)。 ※長尾館の項は星野正明さんの執筆です。 ■発行:平成20年2月11日 ■発行者:伊勢崎市 東本町区長 須永 佳也さん ■編集:東本町の歴史編纂委員会 ■編集委員長: 二本柳 炳男さん ■編集責任者: 星野 正明さん ■問い合わせ:殖蓮史談会、または星野正明さん。 ※2010/9/17時点で若干の残部数があるそうです。 |