■日時:2016年(平成28年)7月27日ほか ■場所:いせさき明治館 ■制作者:福島うた子さん、五十嵐 幸枝さん、吉田 勝江さん ■内容:整織(織り)(*) 21世紀銘仙〜いせさき併用絣を紡ぐプロジェクト〜のクライマックス工程「整織(織り)」。伊勢崎銘仙併用絣の製造工程では経糸(たていと)と緯糸(よこいと)はそれぞれ別の工程を経てきました。 それぞれ糸を準備した後、 経糸は・・・糸繰、整経・つなぎ、仮織り、型紙彫り、紗張り、捺染加工、蒸熱、経巻き、引っ込み。 緯糸は・・・糸繰、手動整経、板巻き、型紙彫り、紗張り、捺染加工、蒸熱、パサ返し。 それぞれ別の工程を歩んだ経糸と緯糸は”織り”工程で重なり合い、一つの布として誕生します。 今回の併用絣を紡ぐプロジェクトで用いられたのは須藤玲子さんデザインの「赤いレンガ造り」と「時報塔」、堤 有希さんデザインの「ツツジ」の3作品。(→cf.図柄3点の紹介) 当ページでは ■福島うた子さんが織る「時報塔」 ■五十嵐 幸枝さんが織る「赤いレンガ造り」 ■吉田 勝江さんが織る「ツツジ」 を紹介します。織り子さんたちの手足が同時に動き、高機の足踏台やバッタン、シャトルが生み出す様々な音が「いせさき明治館」に響き渡りました。 (*)”織り”工程の技術用語は”整織”ですが、一般的には”織り”と呼んでいたようです。 併用絣の織り・作業手順経糸(たていと)準備(1)経糸の束(お巻き)を高機(たかばた)後部の菊車に通す。(2)高機上部のロクロから下げられた紐に、経糸先端部の綜絖(そうこう)を吊るす。(→cf.経糸の引っ込み) (3)高機前部の巻き取り棒に巻かれた布に経糸先端を結わえる。経糸先端の糸は一定の量で束ねて輪の状態にしてあり、布先端も輪状に縫い込まれているので、両者の輪の中に金棒を通して結わえる。(詳しくは下記の福島さんの動画参照) 緯糸(よこいと)準備(1)緯糸は事前作業として、糸車を使用して4本の竹管に巻き取られている。(→cf.緯糸の管巻き)(2)竹管に巻かれた緯糸を杼(ひ)(シャトル)の中に取り付ける。 織り作業の流れ(1)足踏台に両足を乗せて交互に踏むと、綜絖が上下に分かれて、同時に経糸に杼が通る隙間ができる。(2)右手で引き綱を引っぱると、杼が反対の杼箱へシャーっと素早く通り抜け、竹管に巻かれた緯糸が巻き戻されながら経糸の間に織り込まれる。 (3)高機上部に吊り下げられたバッタンを左手で掴み、手前に強く引いて緯糸を締め付ける。この作業を「打ち込み」と言い、回数は1,2回程度。バッタンの名称は打ち込み時の音がバッタンと鳴ることから命名されたとのこと。 以下、(1)〜(3)の作業を繰り返す。 併用絣の織り工程における経糸と緯糸の合わせ方伊勢崎銘仙・併用絣では経糸(たていと)と緯糸(よこいと)は別々に捺染されています。経糸は、高機にセットした状態で完成時の図柄を確認できますが、緯糸は管に巻かれているので、柄の位置が分かりません。 この合わせ作業の補助のために、緯糸を捺染したときに、緯板(よこいた)の側面部分に柄に含まれない色を染めておき(この部分を「耳」と呼びます)、これを経糸の端部で合わせて経糸に織り込みます。 経糸と緯糸の合わせの難易度は、柄の細かさや色数や色調などによりますが、今回は、試し織り区間としてサンプル長を設けているので、その区間内で、合わせのポイントを掴みました。 綜絖(そうこう)の数今回の併用絣復活プロジェクトにおいて、経糸を通す綜絖の数は、当初、4枚としましたが、試し織りをした結果、上下動に伴う経糸間の摩擦力が強く、足踏み作業を重くしました。これを受けて2枚綜絖に変更することとし、引っ込み作業からやり直すこととしました。糸の品質や太さ、本数などが綜絖の数の決定要素になりますが、一義的に決まることでなく、経験やノウハウが重要になります。取材・撮影・記録:上岡(Go!伊勢崎) 2016/11/23 記
|
織り(その1・福島うた子さんが織る「時報塔」) |
福島うた子さんが織る伊勢崎銘仙併用絣「時報塔」 2016/7/27ほか(2分57秒) |
織り(その2・五十嵐 幸枝さんが織る「赤いレンガ造り」) |
五十嵐 幸枝さんが織る伊勢崎銘仙併用絣「赤いレンガ造り」 2016/7/27ほか(2分47秒) |
織り(その3・吉田 勝江さんが織る「ツツジ」) |
吉田 勝江さんが織る伊勢崎銘仙併用絣「ツツジ」 2016/7/27ほか(2分46秒) |
今回用いた3つのデザイン |
左から「赤いレンガ造り」、「ツツジ」、「時報塔(じほうとう)」 「赤いレンガ造り」と「時報塔」は須藤玲子さんデザイン、「ツツジ」は堤 有希さんデザイン |
今回のプロジェクトで使用した高機織り工程紹介時に宿題としていた高機の現物画像を掲載します。今回のプロジェクトの織り工程で実際に使用した機械です。半世紀以上前には伊勢崎市や近隣では多くの家庭で所有し、女性たちが家事や農作業の傍ら使用していた高機。現在では伊勢崎織物工業組合や織物ボランティア「織りの会」など、使用可能状態で所有する台数は僅かとのこと。今後、高機を使用した事業が何らかの形で復活し、その時点で高機を再製造する日が訪れることを期待し、詳細寸法と部材の取り合いを調べて、日曜大工でも製作できるようにCAD製作図を起こし、遠からず掲載したいと思います。(2017/1/18 記) |
|
前面から |
背面から |