伊勢崎市のまちなかに残るいくつかの歴史的建造物。神社仏閣など、守るべくして残されている建造物を除けば、徐々にその姿を消しています。学校や公的施設でもその例外でなく、老朽化や強度的・機能的な問題等で解体され、消え去ります。そんな中で更に所有者が民間である場合には、本人が壊すと言えばそれまでのことです。 富岡製糸場の最後の民間所有者・片倉工業が「売らない、貸さない、壊さない」の姿勢を貫いた話は有名ですが、それは優等生的な例。現実的には古ければ古いほど所有者は代替わりし、いつまで残されるのかは保障の限りではありません。 まちの記憶をどこかに残し、現在を生きる私たちが自信につなげることはとても重要なことと思います。そんな思いで、消え去る前にこれらの歴史的建造物を記録したいと思っています。(2015/2/13 記) |
南半分解体旧羽尾商店作業所の建屋の一部として使用され、その後、旧設楽医院の裏庭となっていたレンガ塀。「伊勢崎空襲を語り継ぐ会」(会長:佐藤好彦さん)が、終戦記念日に開催した平和記念講演会の資料によれば、レンガ塀の東面には伊勢崎空襲で焼かれた痕跡が残されています。 同資料によれば、伊勢崎空襲は昭和20年(1945年)8月14日深夜から翌15日午前3時頃にかけて、伊勢崎市と周辺地域が米軍の大型戦略爆撃機B29・93機と1機のレーダー対策機によって受けた空襲。被害は死亡者数40人、負傷者数165人、罹災者数9,516人、罹災戸数2,119戸。 爆撃中心点は当時の伊勢崎市役所のすぐ南側、現在の本町四丁目交差点。飛行ルートは伊勢崎駅の南方・東西方向に3本あり、北側ルートが現在の「アイタワー花の森」の南から駅南・東西通りに沿って西進し、善應寺の西側を結ぶライン。中央ルートが足利県道・「焼きそば・ほその」の東から伊勢崎市図書館を結ぶライン。南ルートが現在の伊勢崎市緑町から三光町を結ぶライン。 このうち、中央ルートに元設楽医院のレンガ塀があり、その東面が黒く焼けただれています。 当レンガが建つ場所は、「伊勢崎駅周辺第一区画整理事業」の範囲内で、レンガ塀周辺では家屋の解体撤去や区画道路整備が進んでいます。伊勢崎空襲の凄惨さを伝える戦争事跡が残るこのレンガ塀の行方を気にかけていたところ、先月4月3日、レンガ塀の南半分が解体され、瓦礫が山積みされていました。 戦争事跡メモリアルとして移築できればとは思いながら、個人所有でもあり、移築場所や移築費用、移築方法等を考えると簡単な話ではなく、区画整理事業のためには解体も仕方ないのだろうと思いつつ、せめて北側半分だけでもとの思いが残り、先日5月14日、再び確認しに出かけると北半分はまだ健在でした。 当サイトでせめて写真だけでも残しておきますが、現物を見たい方は急がれた方が良さそうです。(2020/5/20) |
区画整理事業範囲の家屋が徐々に解体され、ポツンと残された元設楽医院の赤レンガ(北半分) 2020/4/3 |
まだ残されている元設楽医院の赤レンガ塀(北半分)元設楽医院の赤レンガ塀(外側) 2020/4/3 元設楽医院の赤レンガ塀(内側) 2020/4/3 伊勢崎空襲で焼かれた痕跡が残る元設楽医院の赤レンガ塀(内側) 2020/4/3 伊勢崎空襲で焼かれた痕跡 2020/4/3 伊勢崎空襲で焼かれた痕跡 2020/4/3 元設楽医院の赤レンガ塀の端部 2020/4/3 ポツンと残された元設楽医院の赤レンガ(北半分) 2020/4/3 周辺家屋が徐々に解体され、ポツンと残された元設楽医院の赤レンガ(北半分) 2020/4/3 |
解体された元設楽医院の赤レンガ塀(南半分)解体されて山積みされた元設楽医院の赤レンガ塀の瓦礫 2020/4/3 |
ツタと赤い扉と赤レンガ伊勢崎駅前通りの結婚式場(元田原屋さん跡地)のすぐ西側の露地裏に、赤レンガの塀が残されています。塀に囲まれた敷地の中は見えませんが、南側にある木戸なども朽ちていて、垣間見える敷地内には人が住んでいる様子はありません。街中のぶらりサイクリングの時にたまに通るので、かねてより気になっていて、この日、青い空と赤いレンガ、緑の蔦が口を揃えて「今日撮らなきゃ撮る日はないよ」と訴えていたので、撮影して参りました。民家の脇の狭い路地に面しているので、通りを通過する車からは確認できません。(2009/9/7 記) |
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塀の中央にある赤い木戸が赤レンガとマッチしています。 2009/9/5 |
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今なお傾くことなく立ち続ける赤レンガ塀 レンガの積み方はイギリス積 2010/3/28 |
蔦に覆われる赤レンガ塀 2009/9/5 3段の笠木部分が重厚感を伝えます。 2010/3/28 |
2013/4/28 |
イギリス積小口積みと長手積みを交互に段違いに積む方法。最も堅実で廃材が少ない合理的な積み方と言われています。フランス積同段中で小口と長手を交互に積み、小口センターと上下に積まれた長手のセンターを揃わせる積み方。 化粧面の仕上がりが煉瓦らしく美しいと言われていますが、手間がかかるので工賃は高くなります。他にも、ドイツ積、オランダ積、アメリカ積、小端フランス積み等があるようです。 |