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東京と地方、伊勢崎市を考える

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掲載日:2024/8/9

■都心のマンション・考■

東京23区のマンションの平均価格が1億円超え、10年前の約2倍

 2023年の東京23区のマンションの平均価格が1億円を超え、1億1483万円だったとのこと(→記事)。10年前の約2倍です(→記事)。建築資材の高騰もありますが、投資家が買い占めて価格を釣り上げていることも原因しているよう。それでも計画時点で完売してしまうほどの人気とのことで、驚くばかりです。

気になるのは30年後、50年後

 人気に水を差すようですが、気になるのは30年後、50年後
 現在の購買層の平均年齢は恐らく30代から40代。30年後には60代、70代となり、高齢世代になります。中には後期高齢者もいるでしょう。通常は現役を退き、生活資金は預貯金や退職金、年金です。
 子供達が社会人となり結婚し、二世帯住宅にリフォームしようとしても、戸建て住宅ではないので増築や大幅改築は難しく、高齢者夫婦が住み続ける可能性が高いです。DINKs(*1)世帯でも同様です。高齢者世帯が増えると、多摩ニュータウン(→記事)や都営住宅(→記事)のような高齢者中心の集合住宅の問題を抱える心配が発生します。

*1:DINKS(Double Income No Kids.夫婦共稼ぎ、子供なし)

退去者も徐々に増加

 30年後でなくとも、転勤や離婚、死別、ローン返済不能等で退去する人も出てきます。退去後の空き室(*2)がすぐに売れるのは、恐らく新築後間もない頃まで。売却できたとして、残債以上で売却できるかどうか保証できません。もし、今後価格が下落傾向に転じれば、その不安は増します。売却できない部屋が増えると、管理面や治安面、資産価値の低下等の問題が発生します。
 徐々に空き室が増え、最終的に住人がいなくなっても、各戸の所有者には管理責任が課せられます。解体が適切と判断された場合、費用の負担者問題が発生します。中には相続人もいない空き室もあるでしょう。マンションの管理費に解体費の積立金も含まれていたならば問題も少ないでしょうが、新築時に解体費のことまで考えるのは理想ではあるものの、一般的ではないでしょう。

*2:マンションのような集合住宅の一世帯分を「家」と呼ぶのか「室」と呼ぶのか確信がないので、ここでは「室」と呼ぶことにします。

維持補修の住人意見調整は?

 法令によるマンションの耐用年数RC造の場合47年、重量鉄骨造で37年(→記事)。この耐用年数は減価償却の年数ですが、実際、新築後30年も経てば、老朽化や地震等により、壁の亀裂や鉄筋の腐食、給排水管の劣化、壁や床タイルの損傷、雨漏り水漏れのトラブル等が発生します。世帯内に限られた維持補修は、その世帯だけの方針で対応できますが、建物全体や共有スペースの場合は簡単ではありません
 管理費の積立金や建物の保険金で充当するとしても、タワーマンションのように数百世帯が住むマンションでは、経済力や考え方などの違いを調整することは容易ではありません。誰でもが利用するエントランス回りや乗降施設、水道、防火や消火設備、電源設備等は全員の賛同を得るでしょうが、自分の住むフロアから全く離れたフロアのトラブルには共有の資金を使いたくない人もいるでしょう。
 戸建て住宅は一人の判断で決着が付きますが、マンション等の集合住宅では十人十色、住人分の意見があり、調整は簡単ではありません。
 管理組織が盤石で、信頼性や継続性がある場合はトラブルも少ないでしょうが、例えば新築時の事業者が倒産してしまって管理組織が弱体化したり、管理規定が不備だったりすると、対応が難しくなります。

リタイア後の生活設計は?

 現役時代を都心のマンションで暮らし、引退後は地方や千葉、埼玉辺りの郊外の戸建て住宅に引っ越す生活設計もありますが、住宅ローンが完済しているか、残債が残る場合、残債と新たな住宅購入費を賄えるか、老後の生活資金が残るか等、経済的理由が重要になります。また高齢世代になってから、都心の便利さと交友関係を捨て、車社会の地方に溶け込んで、新たな人生をリスタートすることはそれほど簡単ではないでしょう。

東京の人口は2030年から減少、2060年にはピーク時の85%

 都内の人口は2030年の1424万人をピークに減少に転じ、2060年には1200万人台まで減ると予想されています(→記事)。マンション需要を支える人口がどれだけ減るのか分かりませんが、少なくとも現在の需要は続かないでしょう。需要が減れば当然価格も下がります
 現在、タワマンが林立する場所は都内にたくさんあって、人々の羨望の的です。下記にいくつかの事例を示します。
■殺風景な工場地帯がタワマン林立の高級住宅街に・武蔵小杉(→記事
■下町に「タワマン」林立、東京湾岸一変(→記事
■タワマン立ち並ぶ東京・豊洲(→記事
 都心のマンションブームは現在まだ続いています。不動産業や建設業は自社利益のためにこの傾向を保ちたいところでしょうが、人口減少や在宅ワークの定着、東京一極集中問題等々、ブームを下降させる要因も少なくありません

マンションの寿命後、解体は誰が?

 30年後、50年後には住人も歳を取りますが、建物も老朽化します。人間は引っ越すこともできますが、建物は移動できません。維持補修の限界を超えたり、住人が減少したり、あるいは再開発の計画が持ち上がった時等、解体が視野に入るでしょう。タワーマンション等の高層建物は築造費も膨大ながら、解体費もそれ相応です(→記事)。アメリカのように、ダイナマイトで一瞬にして爆破してしまえば簡単ですが、日本ではコツコツと安全に解体を進めます。下記は竣工後、40年、50年経過した高層建物の解体事例です。

■みずほ銀行内幸町本部ビル(旧第一勧業銀行本店)140m(1981年竣工、2021年閉館)の解体(→記事
■浜松町の世界貿易センタービル162m(1970年竣工、2021年閉館)の解体(→記事

 大手企業が施主の商業ビルの場合には管理面・資金面も充実しているでしょうが、個人向けマンションの事業者の場合、30年、50年続く安定基盤があるか、不安が残ります。解体費用は、賃貸マンションは所有者が負担するでしょうが、分譲マンションでは各戸の負担となります。竣工を待ちに待って意気揚々と入居した時点から、管理費の一部を解体費用に引き当てる等、堅実な場合はさて置いて、解体が決まった時点で解体費を各戸から拠出するとなると、混乱を来します
 また、解体後更地にして土地を売却する、解体後、再建築して元の住人に分譲する、あるいは解体を含めて別の事業者に売却する等、様々なケースが考えられ、費用計算もケースバイケースです。これに個々の住人の事情や要望が加わると、関係者が納得するプランがまとまるまでの道のりは遠いです。

将来のことを考えると、マンション、特にタワマンは面倒臭い

 多くの人の羨望の的でステータスシンボルとなっている高層マンションですが・・・、

■多くの世帯が一棟に住むこと=権利や要望・主張も戸数分存在
■大規模な維持補修・改修、あるいは解体時には戸数分の調整が必要
■高層であること=建築費が膨大な分、解体費もそれ相応


 このようにまとめると、個人が自由に増改築、再建築、解体、売却ができる戸建て住宅に比べて、タワマンは相当面倒臭い。周囲の風景を見下ろせる高さも、日々の生活に慣れてしまえば特別なことではなくなるでしょう。むしろ、高層階から一階までのエレベータの乗り降りも、すぐに外に出られる戸建て住宅から比べれば煩わしいこと。
 財テクで購入した人は時期を見計らって損をしないうちに手放すのでしょうが、自分の住居として、場合によっては終の棲家として住んでいる人にとって、維持補修や解体は人生の一大事です。そんなに簡単に割り切ることはできません。

 以上、都心のマンションブームに水を差すような発言をしました。

 でも、結局、何を言っても東京への一極集中は止まらず、土地の立体利用は増え続け、年々、ニューヨークや香港のように、高層建築物が建ち並ぶ姿に変わりつつあります
 いつまで続く都心のマンションブーム。30年後、50年後にはこの世にいませんが、タイムトンネルに乗ってこの目で確かめてみたいものです。(2024/8/9 記)



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