いせさき明治館で8月3日まで開催中の”めいせん型紙と伊藤正義の刀刻”展。7月19日、20日に開催されたいせさき七夕の共催イベントとして刀刻のご本人、伊藤正義さんの実演が行われました。 私がお邪魔したのは2日目。会場には開始前から見学者が訪れ、中には、”チラシで伊藤君のことを知ったので会いたくてやって来た”と40年振りの再会を果たした同年輩の方もいました。昔、伊藤さんと同じ仕事をしていたとのことです。 また、伊勢崎銘仙応援部隊として嬉しかったのは、若い方たちが多かったこと。先入観で年配のご婦人方の見学者が中心になるのだろうと予想していたところ、20代、30代の若い人たちが刀で刻む伊藤さんの手先に熱い視線を向け、制作しながら話す伊藤さんの話に聞き入っていました。 |
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私は、以前、”いせさき燈華会”や”いせさき銘仙の日”に催された伊藤さんの作品展で何回かお話を伺っていて、その時に感じたとても気さくな人柄に甘えて、実演する伊藤さんのすぐ目の前に座り、制作手順やその過程のあれこれ、使用材料や道具のこと、銘仙との関わりなど、色々なお話を伺うことができました。 印象深かったのは、基となるデザインを生み出す話。同じようなデザインでは観る方も制作する方も飽きてしまうので、常にアンテナを立てて、観る物、聞く物に関心を寄せていること。そしてデザインを思い付くのはかけた時間でもなく、制約でもなく、何か別の要因。多分(言葉では交わしませんでしたが)、様々な要素を頭と心の中で醸造、熟成し、突然に湧いてくるインスピレーションなのだと感じました。そして、数枚のきり絵を重ねて得られる微妙な色や形状の変化は、本人でさえ予想しなかった姿が現れ、それがまた刺激的で楽しいとのこと。 意外だったのは、デザインが決まった後の刀刻工程は簡単と言うこと。虫メガネで観ても見えないような細かい形状を切り抜き、素人の私は、そのことも十分に難しい作業と思っていましたが、15歳から着物の捺染型紙の彫刻師として修業した伊藤さんにとっては、時間をかければいいだけの作業とのこと。伊藤さんにとって簡単なことでも、それは60年の歴史によって培われた技術、素人の私らはそう言う訳には行きません。 面白かったのは、視力について問うと、”とっくに老眼です。これ、百均で買って来た老眼鏡です。これで十分。”。ちょっと拝借してかけてみると確かに鮮明。”弘法筆を選ばず”でした。 他にも道具や材料の入手先や手入れのこと、東京での修業時代のことなど、たくさん伺うことができましたが、また別の機会に譲るとしましょう。今回の実演イベントは既に終わりましたが、「是非会ってみたかった」と言う方は、次回の”いせさき燈華会”や”いせさき銘仙の日”に会えるかも知れません。その機会までお待ちください。 (2014/7/24 記) |
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実演会場。座卓と蛍光灯、和紙など 大きなカメラに収める人もいて 見学者と気さくに話を交わす伊藤正義さん |
年配の方、若い方が魅入ります。 拡大しても良く見えない小さな形状を お喋りしながらスイスイと刻んで行きます。 説明に聞き入る見学者の皆さん |
伊勢崎銘仙の型紙20点と伊藤正義さんの刀刻(とうこく)作品24点が、夏銘仙の着物15点と一緒に、いせさき明治館に展示されています。 伊藤正義さんは伊勢崎市に生まれ、着物の捺染型紙の彫刻師として修業し、パリ現代日本美術展名誉賞や群馬県美術展知事賞、流形美術会最優秀賞始め、様々な賞を受賞し活躍している現代アート作家。その手法は刀刻と呼ばれ、平易な言葉で表現すれば、”非常に緻密で繊細なきり絵”。 作品全体を少し離れた距離から見て、最初に感じるのが神秘的で幻想的な世界。その不思議さに惹き込まれ、「どうなっているのだろう?」と湧き起こる好奇心。近くに寄ってみれば、円弧や直線などの幾何形状に囲まれた大中小の形状が何十、何百、何千と正確に刻まれていて、小さなものは、虫眼鏡がなければ分からないほどに繊細です。 ちょうど、マクロ映像からズームインして、顕微鏡画像のようなミクロ映像を見たような、そんな驚きと感動を覚えます。 絵が表現しているのは、富士山や蝶々、太陽や月、波紋やビル街など、分かり易いモチーフもあれば、直線と曲線が自在に交錯した図柄もあります。これら幾何学的模様は、一見心の赴くままデザインされたかのようですが、ベースにはクロソイド曲線や螺旋のような統一性も存在し、それが安心感と流動感、躍動感を与えてくれます。 色についても、実に多くの色が使用されているように見えながら、近くで観ると、何枚ものきり絵が重なることによって生み出された中間色だったり、観る人の目の錯覚で変化して見えたり、その妙にも驚きます。 そして何よりも感動し嬉しいのは、伊藤さんが修業した伊勢崎銘仙の型紙彫刻師の世界が、作品の根底に流れていることを感じられることです 伊藤さんの作品は、「いせさき燈華会」や「いせさき銘仙の日」などでも、伊勢崎神社2階でも何度か展示されていますが、今回の展示は、数的にも大きさ的にも、それをはるかに凌ぐものです。 一方、今回同時展示の銘仙型枠は、伊勢崎銘仙の反物製造過程で使用された図柄の型枠。ちょうど版画絵を仕上げる時の、一枚ずつの版木の位置付けです。型枠自体はモノクロですが、そのことがまた様々なイマジネーションを呼び、見学する人の創作意欲を掻き立ててくれます。単純に行燈などで利用するも良し、新しいアート作品に仕上げるも良し、窓などに貼ってステンドグラス風に利用しても良し、皆さんならどのようにして新しい命を吹き込みますか? 単衣(ひとえ)の涼しそうな夏銘仙と一緒に展示された、”めいせん型紙と伊藤正義「刀刻」の競演”展、会期は8月3日(日)までです。滅多に見られない貴重な展示会、出かけてみてはいかがでしょうか。(2014/7/11 記) 主催:伊勢崎市観光物産協会 いせさき明治館入館無料伊勢崎市曲輪(くるわ)町31-4、開館時間=10時〜17時 休館日=月・火曜日、TEL 0270-40-6885 |
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(1)伊藤正義さんの「刀刻」作品 |
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(2)玄関で迎える「刀刻」作品の夏銘仙 |
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明治館1階ホールの展示(4) |
(5)伊藤正義さんのファンタジックワールド (7) (9)この行燈も伊藤正義さんの「刀刻」作品 |
(6)夏いろ、伊勢崎銘仙 (8)いかにも涼しそう、夏銘仙 (10)大きな図柄、大胆で華やか、夏銘仙 |
(11)桜と山河、伊藤正義さんの「刀刻」作品 |
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(12) (15) 伊藤正義さんのプロフィール |
(13) (14)ゴージャスで大胆・伊勢崎銘仙の着物 (16)不思議な世界へ |
2階廊下や座敷の展示作品 |
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(17)伊藤正義さんの「刀刻」ワールドと夏銘仙のコラボレーション |
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(18) (20) (22) |
(19) (21)伊勢崎市のクリアファイルでもお馴染の作品 伊勢崎銘仙の着物のようです |
銘仙捺染型枠(2階座敷の展示)(23)銘仙の捺染型枠 |
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(24)窓に貼られた型枠が和風ステンドグラスのよう (26) |
(25)型枠が立派なアート作品 (27) |