2024年4月20日、伊勢崎市某所で自生するキンランとギンランの現地調査・観察会が開催されました。2015年以来、今年で10年目です。 ・・・と、のっけから恐縮ですが、私は開催日3日前にギックリ腰になってしまい、残念ながら参加できませんでした。 観察会には欠席だったので、当日の皆さんの様子は紹介できませんが、参加者は下記20名でした。 ・講師・・・群馬大学社会情報学部・石川真一教授 ・参加者・・・ひじ伊勢崎市長、地元区長会7名、保護保全職員5名、群大生4名、ほか2名 ![]() 調査観察会の時間は2時間。敷地全体の調査には不十分なので、毎年日を改めて株数調査を行っていますが、今年は腰の痛みが薄らいだ4/30、5/2、5/3日の3日間で行いました。観察会の日はまだ開花が始まったばかりだったようですが、再調査日にはちょうど咲き揃っていました。キンランに限らず、野外で咲く花の開花が天候によって一週間から10日ずれるのは仕方ないことですが、日程決定には悩むところです。 今年確認したキンランは過去最多を9株増やして329株、ギンランは48株、合計377株。総数としては過去3番目の多さでした。ギンラン確認数が減少しましたが、ギンランは背丈が低く、過去ギンランを多数確認した場所に落ち葉の堆積が5~20cmあったので、発芽を難しくしたのでしょう。 ![]() 当キンランギンラン自生地は樹木林。落ち葉の堆積は自然の営みの結果。自然林ならばそのまま放置しても腐葉土となって樹木たちの栄養源。ただ、ギンランのような小さな草花は堆積の厚さや重さによっては発芽が難しくなり、保護保全活動の必要性や課題が生まれます。 今後の展望はさて置いて、2024年の伊勢崎市某所で咲くキンラン、ギンランの様子を以下に紹介しまう。 (2025/2/22 記) 群馬県で絶滅危惧種IB類(2022年改訂版)(*1)に指定されているキンランとギンラン。伊勢崎市の某所で平成10年(1998年)に茎が確認され、2015年春には約30株の開花を確認。その年、平成27年度ぐんま緑の県民基金市町村提案型事業の対象となり、以来、保護保全活動が行われています。(→詳しくはこちら) (*1)群馬県では絶滅危惧種IB類(2022改訂版)、環境省レッドリスト2020(2019度改定)では絶滅危惧II類(VU)と指定。 ![]() |
敷地が広いので、調査精度を上げるためと作業を進め易くするため、全体を16分割して調査。2021年以降採用した方法です。開花・未開花を区別せずにカウントしましたが、未開花株のキンラン・ギンランの識別は、茎や葉の太さ、大きさ、周囲の開花株、過年度の記録などを考慮しました。
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![]() クヌギと思しき樹木の根元で咲くキンラン7株 2024/4/30 |
![]() 1株だけスッと背を伸ばしたキンラン 2024/4/30 ![]() 隣り合って咲く2株のキンラン 2024/4/30 ![]() この場所では毎年咲いてくれます。今年は4株がお目見え。 2024/4/30 |
![]() 堆積した落ち葉を除去した場所で咲くキンラン4株 2024/4/30 ![]() 樹木で覆われた場所で咲くたくさんのキンラン 2024/4/30 ![]() 一か所で7株まとまって咲くキンラン 2024/4/30 |
![]() この木肌はマテバシイでしょうか。昨年咲いて枯れた茎が残っています。2024/5/2 |
昨年の調査観察会で始めて遭遇した全身真っ白なキンランのアルビノ種。今年も昨年とは別の場所ながら、遠からずの位置で一輪発見しました。 ※アルビノ:組織の一部または全体が白くなった変異のうち、突然変異などの遺伝的な原因で生じたものをアルビノと呼ぶ。植物ではアルビノは色素体突然変異 (葉緑体変異) と言う。 ![]() 花弁に微かにクリーム色が残るアルビノのキンラン。 2024/5/2 ![]() 茎も葉も見事に色素が抜けています 2024/5/2 ![]() なぜか健気さ、はかなさを感じるアルビノのキンラン 2024/5/2 |
今年確認したギンランは48株。昨年より11株減少。最多時の半分以下だった原因は、昨年同様、ギンラン自生地に5cmを超える枯葉や土砂が堆積していたためと思われます。ギンランはキンランに比べて背丈が低く、小さいのは地上部が5cm程度。地中部で数年過ごし、やっと地上部に芽を出そうとしたところ、頭上に重くのしかかる枯葉や土砂。枯葉も土砂も自然の営み、その環境で自生できないならばそれまでの命・・・とも言えるでしょうが、自生地と分かっている場所だけは手を加えたいところです。![]() 背丈がく花弁数も多いギンラン 2024/4/30 ![]() 木の根元で咲くギンラン。後ろの木が菌根菌発生の親木でしょう。 2024/4/30 ![]() 葉の形状はキンランによく似ています 2024/5/3 ![]() 花弁がたくさん付いたギンラン 2024/5/3 |
以下、キンランに関するWikipediaの記事引用です。太字と赤色、下線はサイト管理人・丸男が付記。以前の紹介ページにも掲載した内容ですが、重要事項なので再掲します【性質に関して】キンランの人工栽培はきわめて難しいことが知られているが、その理由の一つにキンランの菌根への依存性の高さが挙げられる。多くのラン科植物の場合、菌根菌は落ち葉や倒木などを栄養源にして独立生活している腐生菌である。ところがキンランが依存している菌は腐生菌ではなく、樹木の根に外菌根を形成する樹木共生菌である。<中略> 外菌根菌の多くは腐生能力を欠き、炭素源を共生相手の樹木から供給されているため、その生存には共生関係を成立させうる特定種の樹木が必要不可欠となる。そのような菌から栄養分を吸収しているキンランは、樹木の作った栄養を、菌を通じて間接的に摂取しながら生きているとも言える。 <中略> このような性質から、キンラン属は菌類との共生関係が乱された場合、ただちに枯死することは無いが健全な生長ができなくなり、長期間の生存は難しくなる。自生地からキンランのみを掘って移植した場合、多くの場合は数年以内に枯死する。 <中略> 現在のところ、一般家庭レベルの技術で共生栽培を成功させる手法は確立されていない。 【保全状況】元々、日本ではありふれた和ランの一種であったが、1990年代ころから急激に数を減らし、1997年に絶滅危惧II類(VU)(環境省レッドリスト)として掲載された。また、各地の都府県のレッドデータブックでも指定されている。同属の白花のギンラン(学名:C. erecta)も同じような場所で同時期に開花するが、近年は雑木林の放置による遷移の進行や開発、それに野生ランブームにかかわる乱獲などによってどちらも減少しているので、並んで咲いているのを見る機会も減りつつある。 |