キンラン、ギンラン 2016 [ ぐんま緑の基金・伊勢崎地区 ] [ Home ]



キンラン、ギンラン 観察記録 2016

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番外編動画で紹介キンラン、ギンランについて(是非お読みください)2016/4/19、4/20の状況
更新日:2016/7/7
 伊勢崎市の某所で咲くキンランとギンラン。2016年の今年も健在です。

 当サイトでキンラン、ギンランを紹介したのが昨年4月末。その後、群馬県議会議員 臂 泰雄さんほか関係者皆さんのご尽力を得て、平成27年度ぐんま緑の県民基金市町村提案型事業(第2次募集)の対象となり、「波志江町一丁目地区内キンラン・ギンラン生息地保護事業」として波志江町一丁目区(*1)を活動母体に生息地の定期的な除草、盗掘等の被害防止のための周辺パトロール等が実施されて来ました。
 キンラン、ギンランは絶滅危惧種IB類(*2)。伊勢崎市内での生息記録は乏しく、この地の生息は非常に珍しく貴重なことです。今回の発見者は伊勢崎市公園緑地課課長の小島忠さん(*3)。平成10年、今から16年前のことです。
 私が小島さんに生息地を案内していただいたのは4年前。開花時期を過ぎていましたが2株の茎を確認。翌々年の昨年、その後の様子を確認したところ、2株をはるかに超えて30株余りの株を確認できました(→記事はこちら)。4年前と昨年とで生息環境が大きく異なったのは地面の状況と日照量。
 4年前は敷地内で伐採した大量の樹木が地面全体に積まれ、空いたスペースは下草が覆っていました。感覚的な表現をすれば「鬱蒼として分け入るには相応しくない」状況でした。昨年はそれら堆積した枯れ枝はチップ化されて地面に敷かれ、下草も刈り取られて、キンラン、ギンランはそのような地面から発芽していました。
 樹木の枝の間から射し込む日照量は4年前より昨年の方が増えています。大雪被害で折れた枝が多かったこと、管理剪定を行ったこと、下草の手入れを行ったことなどが発芽に好ましい影響を与えたようです。
 これらの管理が好影響を与えたと推測されるキンラン、ギンランですが、発芽や生育のためには三位一体の共生関係が必須とのこと。三位一体とは・・・
 キンラン、ギンラン自身の種子があること
 ブナ科の樹木が存在すること
 これに共生する菌類が発生していること。

 種子は地中で菌に養ってもらいながら成長して発芽を待つようですが、その期間は5~10年間とのこと。言い換えればこの環境がない限り、キンラン、ギンランは発芽せず、成長した茎を移植しても数年以内には必ず死滅するとのことです。
 今回の管理方法についても課題は残ります。
 チップを敷くことの適否は?「適」とするならその厚さは? 生木と枯れ枝とどちらのチップがいいのか? チップの樹種は選ばないのか? 日照量の適量は? 日照量に影響する樹木伐採量は? 土壌の含水率の適量は? 土壌の通気性を上げるための撹乱程度と頻度は? 菌根を形成する樹種とは、今回の生育地において具体的にはどの樹木? 盗掘対策は?・・・などなど。
 現時点で確固たる答えを見出すことは難しいようですが、今後の樹木や下草、土壌管理、発芽や開花状況のデータ収集を経ていずれ何らかの答えが出ることと思います。当サイトにおいても、キンラン、ギンランの継続的な保護の一助になるべく、観察や記録に関して協力して参りたいと思っています。(2016/4/22 記)

(*1)波志江町一丁目区が活動母体ですが、日常の樹木管理は株式会社いせさき総合開発(代表取締役 上岡七三さん)が行っています。
(*2)群馬県公式サイトでは絶滅危惧種IB類と記載、Wikipediaでは絶滅危惧II類(VU)(環境省レッドリスト)(1997年)と記載されています。
(*3)当サイトの花や樹木の記事中で、時々「私の花と緑のお師匠さん・公園緑地課のKさん」として登場していただいたのが小島さん。一時期、別部署に異動になり「公園緑地課のKさん」の呼称が使えなくなって困っていたところ、この4月に戻って来られたのでこの機会に本名で呼ばせていただくこととしました。

エゾスズラン(キンラン、ギンラン・番外編)

更新日:2016/7/7 ▲ページTopへ
 先日、当ページで紹介した伊勢崎市波志江町で開花したラン科と思える花(→記事はこちら)。キンラン、ギンランが開花した場所に近かったこともあって興味津々でしたが、名前が分からないままでした。伊勢崎市公園緑地課課長の小島忠さんに相談し、群馬大学社会情報学部の石川真一教授にご教授願うこととなりました。石川教授にはすぐに対応していただき、群馬県立自然史博物館学芸係主幹の大森威宏さんと共に鑑定していただき、その結果、この花は

エゾスズラン

と鑑定されました。石川教授によれば、スズランと言ってもユリ科ではなくラン科の花で、常緑広葉樹の林床に生育する珍しいランで、絶滅危惧種に指定している県も多いとのこと。管理方法は、キンラン、ギンランに対する管理方法と同様に、草刈りや落ち葉かきでよいとのことです。

 キンラン、ギンランに続いて、珍しいラン科の花が開花した伊勢崎市の自然。開花の背景には、この施設造成時に使用した盛土材が山岳地のもので、その土砂に様々な菌や種が埋まっていたのだろうとの推測がありますが、工事時期が数十年前のことで、現時点でどこの土砂だったのか特定できていません。エゾスズランをウェブサイトで画像検索すると、大半が山岳地の事例で、平地での記事は稀です。この貴重な状況が現実として存在することは素晴らしいこと。末永く守り続けたいものです。
 鑑定についてご協力ご教授いただいた皆さんには厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。(2016/7/7 記)

 以下、「山渓ハンディ図鑑2 山に咲く花」(出版:山と渓谷社)からの引用です。
 山地の林内に生える多年草。茎は高さ高さ30〜60cm。葉は数個互生し、長さ7〜12cmで短毛がある。茎上部に緑色の花を20〜30個総状につける。萼片、花弁は長さ約1cm。花期は7〜8月。

■当初紹介

 キンラン、ギンランが数十株咲く伊勢崎市波志江町。ぐんま緑の県民基金を受けながら保護活動が始まりましたが、同じ敷地内でキンラン、ギンランに似た花が咲きました。葉っぱの付き方はギンランにも似ていますが、ホトトギスの方により良く似ています。 花のつき方(花序)は総状花序(花軸に花柄のある花が側生してつく)か穂状花序(花軸に花柄のない花が側生してつく)のようですが、正確には分かりません。ちなみにキンランは総状花序
 キンラン、ギンランと異なるのは開花時期。今年の場合、キンランギンランが4月中下旬ころに開花が始まりましたが、この花はその2か月後の6月下旬に開花しました。普通に見られる花なのか、珍しい花なのか、キンラン、ギンランの変種や亜種なのか、何とも分かりません。(2016/7/1 記)

花の形はキンランに似ているような似ていないような 2016/6/25


葉っぱの付き方はキンランよりもホトトギスに似ています 2016/6/25


花のつき方(花序)は総状花序穂状花序のようです 2016/6/7

2016/6/7

2016/6/25

動画で紹介

掲載日:2016/5/18 ▲ページTopへ

伊勢崎市某所で咲くキンラン(52秒)2016/4/19、4/20、4/29

2016/4/19、4/20の状況

掲載日:2016/4/22 ▲ページTopへ
 2016年の最初の観察は4月19日。株式会社いせさき総合開発の上岡さんから「開花が始まっている」との連絡をいただいたので、上岡さんに案内いただいて公園緑地課の小島さんと観察。
 2度目の観察は翌4月20日。2日続けての観察ですが、この日は群馬県議会議員 臂 泰雄さんと群馬大学教授 石川真一さんを招き、伊勢崎市役所環境保全課の職員さん、群馬大学学生さん、波志江町区長さん、環境保護活動団体の方たちが参加し、改めての観察と調査。この日、上岡さんが新たに見つけたギンランの生育場所も観察。その株数は15株。この場所は昨年においても確認できなかった場所です。
 ギンランの大きさがキンランの1/3程度なのは昨年と同様です。昨年発芽し、今年はまだ確認できない場所もありましたが、開花時期が昨年より10日ほど早いので、少なくとも向こう2週間程度の観察は必要になるかと思います。次回の観察は4月下旬を予定しています。(2016/4/22 記)

開花が始まったキンラン 2016/4/19

開花が始まったキンラン 2016/4/19

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キンラン 2016/4/20

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ギンラン


開花が始まったギンラン 2016/4/19

掲載日:2016/4/22 ▲ページTopへ

個別の発芽・開花状況

 発芽前の株もあるために正確な株数はカウントしていませんが、4月20日時点でキンラン、ギンランの開花前・開花後の株数全体で50株余りを確認できました。(2016/4/22 記)

※下の画像には同じ個体を別角度で撮ったものも含まれています。

2016/4/19

2016/4/19

2016/4/19

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2016/4/20

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2016/4/20

2016/4/20

キンラン、ギンランについて

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 以下、キンランに関するWikipediaの記事引用です。太字と赤色、下線はサイト管理人・丸男が付記。昨年の紹介ページにも掲載した内容ですが、重要事項なので再掲します

【性質に関して】

 キンランの人工栽培はきわめて難しいことが知られているが、その理由の一つにキンランの菌根への依存性の高さが挙げられる。多くのラン科植物の場合、菌根菌は落ち葉や倒木などを栄養源にして独立生活している腐生菌である。ところがキンランが依存している菌は腐生菌ではなく、樹木の根に外菌根を形成する樹木共生菌である。
<中略>
 外菌根菌の多くは腐生能力を欠き、炭素源を共生相手の樹木から供給されているため、その生存には共生関係を成立させうる特定種の樹木が必要不可欠となる。そのような菌から栄養分を吸収しているキンランは、樹木の作った栄養を、菌を通じて間接的に摂取しながら生きているとも言える。
<中略>
 このような性質から、キンラン属は菌類との共生関係が乱された場合、ただちに枯死することは無いが健全な生長ができなくなり、長期間の生存は難しくなる。自生地からキンランのみを掘って移植した場合、多くの場合は数年以内に枯死する。
<中略>
 現在のところ、一般家庭レベルの技術で共生栽培を成功させる手法は確立されていない

【保全状況】

 元々、日本ではありふれた和ランの一種であったが、1990年代ころから急激に数を減らし、1997年に絶滅危惧II類(VU)(環境省レッドリスト)として掲載された。また、各地の都府県のレッドデータブックでも指定されている。
 同属の白花のギンラン(学名:C. erecta)も同じような場所で同時期に開花するが、近年は雑木林の放置による遷移の進行や開発、それに野生ランブームにかかわる乱獲などによってどちらも減少しているので、並んで咲いているのを見る機会も減りつつある。





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