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高見勘次郎『伊勢崎の植物』(伊勢崎郷土文化協会 昭和43年)30〜31頁 26 華蔵寺のキンモクセイ もくせい科
華蔵寺の前庭にある有名なキンモクセイで、国指定の天然記念物である。筆者の調査によれば目通りの幹囲2.8m。根元の周囲2.15m。地上1.5mで4本に分れ又更に十四本に分れておる。樹高10.6mに達し、枝は東西約20m。南北15mに張っている。樹齢は300年と推定せられる。毎年秋月開花し、その芳香実に4キロにも達するという。全国でも有数の金木犀である。昭和11年9月10日天然記念物として文部省から指定せられれた。
さてキンモクセイは学名『オスマンサス・フラグランス・ラワ・パライテイ・オーランテアクス』で、往古中国からの波来植物で高さ通常4m位に達する、常緑喬木である。雌雄別株で通常は九月末に開花するが、初秋の温度の比較的高い年には遅れて十月初旬に開花する。(昭和34年度は10月初旬から中旬にかけ開花した。)本邦に来ている品種は皆雄株であるために結実することはない。只キンモクセイに極似しているウスギモクセイには発達している雌花もあって結実する。次に日本にある三木犀を比較すれば、
種 類 花色 結 実 葉 の 形
○キンモクセイ 黄赤色 結実せず 披針形又は長楕円計
○ウスギモクセイ 淡寅色 結実する 広披針形又は長楕円計
○ギンモクセイ 白色 結実せず 楕円形、鋸歯を有す
右記のようであるが、キンモクセイとウスギモクセイの両者は特に誤り易い。ウスギモクセイは割合に珍らしい方である。旧伊勢崎では上泉町新井宗民氏宅に植栽せられている。
又豊受では馬見塚町の某家に於ても数本植栽している。さて広く日本に於ける栽培分布を見れば、キンモクセイは関東地方に多く、ギンモクセイは関西方面に多い。
国の指定としての天然記念物には右述の華威寺のキンモクセイの外に邑楽郡邑楽村の永明寺境内にもある。これは根元の周囲4.68m、地上1.3mで幹は南北に向って二分し、この部分の周囲約3.4m、又北枝の基部の周囲20.5m、南枝の基部周囲約1.65mである。北枝は地上約1.65mでさらに中央と北方との二枝に分かれている。根元からの枝張りは東方約6.75m 西方約7m 南方約8m 北方約7.3mで群馬県では最大なものである。
尚これを全国的にみれば熊本県益城郡甲佐町麻生原観音堂にあるキンモクセイは根元の周囲6.4mもあって全国的に雄なるものである。
(原文は縦書きなので、漢数字を使用しているが、引用するに当たって漢数字を算用数字に改めた。)
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