岡谷蚕糸博物館「富岡製糸場を今に伝える片倉家」2015年1月15日、発達した低気圧が関東地方と東北南部を通過し、埼玉や群馬の平野部でもみぞれや雪が降ったこの日、信州・岡谷市や諏訪市辺りでは、午後から大雪が降りました。岡谷蚕糸博物館が開催する「富岡製糸場を今に伝える片倉家」の企画展初日、伊勢崎市を出発し、上信越国境を越える頃にはみぞれ混じりの雪が降り始め、佐久ICを降りて和田峠を通過する頃はいよいよ本降り。雪でぬかる道路もスタッドレスタイヤ装着のスバルサンバーは快適に走り続けます。運転するのは友人のふるさとさん。企画展に誘ってくれたのもふるさとさん。 岡谷市に入り、最初の目的地「岡谷蚕糸博物館」に到着したのは11時を少し過ぎた頃。早速に見学開始です。受付で「群馬から来ました」と伝えると、「遠いところ、足元の悪いところありがとうございます」とお礼を言われ、早くも清々しい気持ち。平日でかつ天気も悪かったせいか、見学者は私ら二人だけで、各コーナーをゆっくりと見学することができました。 ※館内撮影は禁止のため、展示品の写真はありません。 順路の最初は常設展示蚕や繭の様々な種類やシルクのことを実物や写真などで教えてくれます。続いて江戸時代の手作りの木製座繰り機から昭和時代の精密製糸機械に至るまで、多くの製糸機械の実物を展示し、製糸機械の発展の歴史を教えてくれます。展示物の間には糸や布を利用したスクリーンが垂れ下がり、押さえ目の照明も目に優しく、機械が並ぶ館内が柔らかい雰囲気に包まれます。特筆すべきは、富岡製糸場で使われた300釜のフランス式繰糸機の内の151番機と152番機(2機で1セット)の現物が展示されていること。この繰糸機は母国フランスにも残っておらず、世界に残る唯一つの機械とのことで非常に貴重な史料です。また驚くのは昭和に製造された自動繰糸機が日産自動車製であること。トヨタ自動車が豊田自動織機を母体としていることは広く知れ渡っていますが、日産自動車も製糸業に関連していたことを知り、蚕糸、製糸、織物産業が日本の機械産業のルーツとして存在していたことを再認識しました。 「富岡製糸場を今に伝える片倉家」常設コーナーの隣に展示されています。片倉家の創業は明治6年。片倉市助が自宅の庭で10釜の座繰り製糸を始めたのが始まりです。その後、初代片倉廉太郎、二代目片倉廉太郎、片倉光治、今井五介らが発展させ、片倉組(後に片倉製絲紡績株式会社)は日本一の製糸工場となりました。昭和13年からは富岡製糸場の経営を開始し、三代目片倉廉太郎を中心に貴重な史料を数多く残しました。片倉組の基本精神は「売らない、貸さない、壊さない」。この精神に則って、平成17年に富岡市に寄贈するまで保存して来た富岡製糸場。岡谷蚕糸博物館では14点の富岡製糸場史料を収蔵し、今回は富岡製糸場のフランス人生糸技術者ポールブリューナ愛用の応接セットや柱時計、錦絵「富岡製糸工場工女勉強の図」、また片倉家の舟箪笥造りの金庫などが展示されています。話が逸れますが、昭和3年、片倉財閥が地域住民や従業員に福利厚生と社交の場を供するために建造した「片倉館」。諏訪湖のほとりに建つその建物は国の重要文化財に指定され、現在も大理石張りの千人風呂やレストランが一般に開放されています。事業に成功し、その利益を広く地域住民や社会に還元する事業主の姿勢。この日、蚕糸博物館のスタッフの方と話を交わすと、片倉組は松本商業学校や松本女子実業学校などの学校や施設を建造・寄付し、常に行政の力不足を補っていたとのこと。 富岡製糸場の工場閉鎖後も、毎年1億円の維持補修費をかけて保全した話は有名な話ですが、富岡製糸場を今に伝える片倉家のこと、知れば知るほど頭が下がる思いです。 動態展示エリア(株式会社 宮坂製糸所 実稼働)岡谷蚕糸博物館の大きな特徴の一つ、それは製糸工場として今も操業する「株式会社宮坂製糸所」が、博物館と一体となった建物内で稼働していること。見学コースを兼ねた工場内では、従業員の方たちが実際に糸を繰り、その作業風景をすぐ目の前で見学することができます。作業の邪魔にならない範囲で、話しかけたり質問したりすることも可能で、この日も糸を繰る6人の女性に色々と話を伺うことができました。かつては国を支えた基幹産業・絹産業。その工程としての蚕種業、養蚕業、製糸業、織物業、染物業、縫製業など、関連業種は様々です。その業種を現在も継続し、稼働中の姿を広く公開して私たちに伝えてくれる岡谷市や宮坂製糸所の姿勢。市や県、国に指定された重要文化財は保全も重要事項ですが、活用することも重要なこと。その意味で、岡谷蚕糸博物館の宮坂製糸所の実稼働は素晴らしいことと思います。(2015/1/17 記) |
和田峠・星降る里の黒曜の水和田峠の地底深く湧き出ている水。旧石器時代から原始人が黒曜石を求めて日本各地からこの地にやってきた頃から、ひと時の絶え間なく湧き出ている水。黒曜石の間を通って来るためかとてもきれいな水です。 |
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雪降る真冬でもこんこんと湧き出る水。2015/1/15 |
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和田トンネルへ向かう有料道路。 2015/1/15 ふるさとさんの愛車・スバルサンバー 2015/1/15 |
2015/1/15 水は塔の4方向から流れ出ています。2015/1/15 |
岡谷蚕糸博物館入館した11時を少し過ぎた頃はそれほど降っていなかった雪が、約2時間をかけて見学して外に出ると、ご覧のように一面真っ白。知らない間にぼたん雪が降り続いていたようです。スタッフの方たちが通路の雪かきをしてくれました。入館チケット 入館料 一般 500円 |
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雪降る岡谷蚕糸博物館 2015/1/15 |
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のこぎり屋根を模したファサード 2015/1/15 |
ぼたん雪に煙る岡谷蚕糸博物館 2015/1/15 |
岡谷蚕糸博物館の向かい側の大きな建物。空と建物と地面の境界が頼りない。2015/1/15 |
片倉館(温泉浴場棟)鉄筋コンクリート2階建て |
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雪化粧した庭園に囲まれる片倉館(温泉浴場棟) 2015/1/15 |
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雪化粧した片倉館の庭園 2015/1/15 国指定重要文化財説明板 2015/1/15 |
木立の周辺にはホテルが並びます 2015/1/15 2015/1/15 彫刻で化粧された石のベンチ 2015/1/15 |
千人風呂大理石造りの天然温泉。浴槽は広く深い(深さ1.1m)。底には玉砂利を敷き詰められ、足裏を刺激して心地よい。窓の形やステンドグラス、彫刻などの装飾も優雅。贅沢な気分で入浴できます。料金は大人650円。 |
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大理石造りの天然温泉、大浴場。 2015/1/15 |
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アーチの門をくぐれば洗い場。2015/1/15 |
脱衣場 2015/1/15 |
片倉館(会館棟)2階建て木造洋風建築。温泉浴場棟の東側に並んで建っています。化粧が施され重厚感溢れる玄関周り 2015/1/15 |
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