大正から昭和の中頃まで、日本女性が着る銘仙の大半は伊勢崎銘仙でした。 百貨店の大衆化戦略の支援を受けて、東京や大阪の百貨店、特に関西地方の百貨店が販売拡大に成功し、生産地伊勢崎の女性よりも、関西地方の女性に愛され着続けられました。 過去数年に亘り、いせさき明治館で開催された様々な銘仙企画展では、その自由奔放な柄や色遣いによって、伊勢崎銘仙がいかに華やかで、個性的で開放的であったかを伝え、「伊勢崎銘仙は地味な普段着」と言う地元伊勢崎人の過去のイメージを覆してくれましたが、今回展示されている30点は、それらを更に超える華やかで大胆、そして自由な色や柄の着物ばかりです。 今回の伊勢崎銘仙は、財団法人・日本きもの文化美術館 (福島県郡山市熱海町)所蔵の大正から昭和初期にかけて製作された着物。公開展示は下記2日間ですが、公開に先立って、昨日6日に内覧会が行われ、ご招待いただきましたので、一足お先にじっくりと見学して参りました。 9月7日(土) 赤石楽舎(伊勢崎市曲輪町28-24) 午前10時〜午後4時 9月8日(日) 伊勢崎プリオパレス(伊勢崎市昭和町3827) 午前10時〜午後5時 入場無料、主催:上毛新聞社・伊勢崎市 過日、今回借用する伊勢崎銘仙の写真を見せていただいた時にも、その自由で大胆、かつ華やかな色柄に対して、大きな驚きを感じましたが、実物を目の当たりにすると、写真では得られなかった素材の質感や温もり、立体感、輝きなどが伝わって来て、大袈裟でなく衝撃的でした。 |
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今回の展示会は、昨年暮れ、伊勢崎市観光協会が実施したバスツアーで、日本きもの文化美術館を訪問したことが引き金となりました。以来、上毛新聞社やいせさき銘仙の会、いせさき明治館などの関係者が尽力し、貸出展示の交渉を進め、今回の実現に至りました。 大正から昭和にかけ、伊勢崎に生まれ、伊勢崎に育ち、幼い頃から伊勢崎銘仙に接していた伊勢崎人に「伊勢崎銘仙のイメージは?」と尋ねると、ほぼ例外なく「伊勢崎銘仙は紺色から焦げ茶、あるいは暗い灰色をした、井桁模様か単純な縞模様の地味な普段着」と答えます。事実、私の亡き母は明治生まれで、私が幼い頃に、毎晩、夜なべ仕事で部屋の隅に置いた機織り機で伊勢崎銘仙を織っていましたが、織り上がった反物も、本人が着ていた着物も、そのようなものでした。 |
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伊勢崎銘仙に対して同様なイメージを持っていた方はもちろん、過去のいせさき明治館の銘仙企画展を見て既に知っていると言う方にも、是非とも見ていただき、過去のイメージをリニューアルしていただきたい展示会です。もちろん、伊勢崎銘仙を見たことがないと言う方は、そのフレッシュな感性で、素直に触れていただきたいと思います。今回の着物を見ていると、ひょっとしたら、戦前の女性たちが抑圧され自由の少ない精神状態だったと言うイメージも間違っていて、実は、現代の女性たちよりも、よっぽど、心が開放されていたのかと感じざるを得ません。 なお、内覧会には、五十嵐・伊勢崎市長や吉川・群馬県副知事、新井・藤岡市長、磯田・富岡市副市長、前橋市長代理として湯浅・政策部文化国際課長、新井・群馬県近代美術館副館長、黒田・群馬県歴史博物館館長、田村・群馬県観光物産国際協会理事長ら、各自治体や文化・歴史・観光関連機関のトップが訪れ、どなたも熱心に魅入るように見学し、来年「富岡製糸場と絹産業遺産群」として、世界遺産登録を目指す関係者の意気込みを感じました。 当地伊勢崎市では絹産業遺産群の内、境島村の「田島弥平旧宅」が候補者としてあがっています。田島弥平が確立したのは「清涼育」と言う蚕種の養育技法。蚕種が養蚕〜製糸〜織物業の一連業種の入口とすれば、伊勢崎銘仙はそれらが結実した出口です。同じ伊勢崎市に入口と出口があること、養蚕業の歴史遺産として素晴らしい財産です。 「The 銘仙・里帰り」・・・、伊勢崎市にとどまらず、世界遺産登録を目指す群馬県内各関係者に対し、大いなる刺激を与えたと確信した展示会でした。(2013/9/7 記) 伊勢崎銘仙に関する論文: ”1920年代の銘仙市場の拡大と流行伝達の仕組み”,山内雄気氏(一橋大学大学院商学研究科博士課程後期課程) |
大胆で自由、そして華やかな伊勢崎銘仙の着物が会場に並びます。 |
熱心に説明を聞き、見学する内覧会招待者の皆さん |
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全ての着物に対して、日本きもの文化美術館室長の萩谷けい子さんがキャプションを付け、ストーリーを書いています。 萩谷さんにお聞きすると、その着物の前にじっと佇んでいると、その着物の方から語ってくれるかのように、イメージが湧いてくるとのことです。 このキャプションとストーリーが日本きもの文化美術館の訪問者に好評で、特に子どもたちが、着物の前に座り、物語を読むようにストーリーを読んでいく姿が微笑ましく、萩谷さんの楽しみにもなっているとのことです。 |
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「流れの先には」 |
伊勢崎銘仙の生産地でありながら、地元伊勢崎市においても滅多に見ることができない大胆で自由な色と柄の伊勢崎銘仙。この貴重な機会にご招待いただき、一つ一つの着物を自分の目と心にしっかり焼き付けはしましたが、それだけでは寂しく、広く皆さんにも見ていただきたく思い、会場は撮影禁止でしたが、所有者の財団法人・日本きもの文化美術館様の萩谷相談役と萩谷室長にお願いし、撮影と掲載の許可をいただき、ここに掲載できることになりました。 関西地方や東京を中心に、日本全国の女性の心を掴んだ伊勢崎銘仙。今回の企画展のタイトル「The銘仙」は萩谷室長の命名ですが、正にそのタイトルの通り、これぞ「The銘仙」です。実物が持つ絹の質感や温もり、立体感をお伝えするのは難しいことですが、各画像をクリックして大きな画像を覧いただき、多少なりとも「The銘仙」の醍醐味を味わっていただければと思います。(2013/9/9 記) |
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「白雪姫」 「鶴の恩返し」 ストーリー 「ステンドグラス」 ストーリー 「サウンド・オブ・ミュージック」 |
「流れの先には」 ストーリー 「蝶々夫人」 ストーリー 「悠久の流れ」 ストーリー 「春の音」 ストーリー |
「線」 「アラビアンナイト」 ストーリー 「競演」 ストーリー 「シンデレラ」 ストーリー |
「蒙古襲来絵詞」 「リリー」 「鯉幟(こいのぼり)」 ストーリー 「ノアの箱舟」 ストーリー |
「ベルサイユのバラ」 「マハラジャ」 ストーリー 「松の力」 「やなぎは・・・」 ストーリー 「万里の長城」 ストーリー |
「真夏の雪」 ストーリー 「美しい鳥」 ストーリー 「しぶきにつばめ」 ストーリー 「竹取物語」 ストーリー |
伊勢崎に生まれ、伊勢崎に住んでいる私らの多くが、 今回の企画展に接するまで、このような伊勢崎銘仙に触れる機会が少なかったことは、伊勢崎市民として情けない限りですが、
これらを収集して所蔵されていた財団法人・日本きもの文化美術館様の姿勢には敬服するばかりです。 今回の「The 銘仙」企画展は、伊勢崎市民だけじゃなく、 銘仙関係の多くの人、また「富岡製糸場と絹産業遺産群」の世界遺産登録を目指す多くの関係者に大いなる刺激を与えてくれたことと確信しています。日本きもの文化美術館様始め、主催された上毛新聞社や伊勢崎市の関係者の皆さまに、お礼と敬意を表します。ありがとうございました。(2013/9/9 記) |