伊勢崎市立四ツ葉学園中等教育学校(三村 国宏校長)では、9月9日と9月16日の2日に分けて、グローバル体験学習として、伝統文化の体験学習会を催します。 対象学年は中等第1学年から第3学年。一昨年にスタートし、3回目となった今年、第3学年のカリキュラムは”世界に誇る日本のシルク文化 〜伊勢崎銘仙から学ぶ〜”。 世界を知り自己を確立し、日本人としての誇りを持つためには、まず日本を、そして地域の文化を深く知ることが基本。その目的のために課題として選ばれたのが伊勢崎銘仙。銘仙の産業の歴史や銘仙の特徴、可能性などを学びます。 講師陣は「銘仙の会」代表の杉原みち子さんや伊勢崎観光物産協会職員の金井珠代さん、小澤洋一さんら7名。 第1日目が開催された昨日9日は、第3学年の生徒たち男女総勢128名が多目的ホールに集まり、講師陣の自己紹介、他己紹介を経て、まずは銘仙ファッションショーのDVD視聴です。 |
第一日目:まずは銘仙ファッションショーのDVD視聴 |
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DVDを観ながら、伊勢崎銘仙の古くて新しい様々な可能性を学び、感じ取ります。ショーは今年3月、赤石楽舎で開催された「銘仙の会」の高木さんコーディネイトのファッションショー。 ブーツや帽子をかぶった斬新なスタイル、袴姿の可愛らしいスタイル、トラディショナルなスタイル、ドレス仕立てのスタイル等など、様々なスタイルで登場するモデルたちの姿に、生徒たちの視線は釘付けです。 モデルたちが地元を中心とした身近な人々であることを知って親近感を覚え、ニューヨーク始め、様々な場所からショーの開催を期待されていることなどを知り、驚きながらも自信を持ちます。 それらを伝える杉原さんの司会は面白おかしく、時には辛口で、生徒たちを一瞬も飽きさせず、会場が和やかな雰囲気に包まれます。 DVDで伊勢崎銘仙の伝統的な部分とモダンで幅広い可能性などを学んだ後には、いよいよ着物実体験。実体験と言っても座繰りや機織り体験ではなく、伊勢崎銘仙の着物を実際に着て、その感触や雰囲気を味わい楽しむ体験です。 |
第一日目:着物実体験 |
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用意された着物 |
用意された羽織 |
用意され着物は女子生徒19人分、男子生徒4人分、男子教師3人分、合計26人分。着てみたい生徒を募り、定員を超えた希望者が賑やかなジャンケン勝負を繰り広げ、早くも盛り上がりを見せ、会場は楽しく和やかな雰囲気に包まれます。着物を着れなかった生徒たちは、たくさん用意された羽織の中から好みの色柄を自由に選んで着てみます。 | |
ハイ、ハイ、ハイと希望者が次々に手を上げます 男子生徒分は4人分。 希望者多数によりジャンケン勝負。 |
女子生徒の希望者たち |
第一日目:着物の着付け風景 |
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今を生きる14、15歳の少年少女たちが、大正時代から昭和初期にかけて一世風靡した伊勢崎銘仙を着ること、時代にして70年から100年の隔たりある衣装が、決して古さを感じさせません。もちろん生徒たちの若々しさがその重要な要因ですが、伊勢崎銘仙の華やかさが時代を超えて普遍的な魅力を持っていることの証明でもあります。伝統的でありながらモダン、可愛らしくてお洒落、伊勢崎銘仙の新たな価値を再び発見した次第です。 |
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自由に羽織を着る生徒たち 着付けを終え、鏡の前で確認 |
着付け中、にっこりとポーズを取ってくれました 自由に羽織を着る生徒たち |
第一日目:着付完了 |
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一人、一人と次々に着付け完了 こちらの女子生徒たちも着付け完了 |
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着付けを終えた生徒たちが会場の前に勢揃い |
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男子生徒や教師の皆さん |
粋にお洒落に決めた男子陣 |
第一日目:生徒たちの感想 |
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着付けを終えた生徒たちが前に勢揃いし、述べた感想も楽しく可愛らしいものでした。女子生徒たちからの感想をいくつか紹介すると・・・ ・着物が似合うと言われて嬉しい。 ・普段おてんばだけど、着物を着ると女子力が上がった気がする。 ・肌触りが良く、綺麗に着付けてもらって嬉しい。 ・七五三以来、久々に女の子の気持ちになった。 。銘仙には色々な柄があって綺麗。 機能性や摩耗性、耐久性などの理由で日常生活から消え去った着物。便利になったと同時に、他の何か大切なもの、例えば、動き難いからこそ生まれ出るおしとやかさや優雅さ、粋な雰囲気、今の若い世代の言葉では”女子力”なども消え去りました。綺麗に着て着こなすためには着付けや作法を覚えなければならない着物、その制約が着物へのこだわりや愛着、着る歓びを生み出します。生徒たちのコメントは、表現を変えながらも、これらのことを伝えてくれました。 |
第一日目のおわりに |
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今日の催しの案内は金井さんから。伊勢崎銘仙に惚れ込んで、「いせさき明治館」で様々な銘仙企画展を催している方です。私の銘仙に対する過去の一辺倒な知識を修正し補ってくれたのも金井さん。案内をいただいた時、教育施設への取材は色々と面倒なのではとの先入観から取材を躊躇していましたが、事前に三村校長に電話で取材許可をお願いすると、「こちらこそ是非よろしくお願いします、ありがとうございます」と気持ちよく快諾いただきました。 三村校長のこの快活さは校風にも影響しているようで、校内で会う生徒さんたちが通りすがりに「こんにちは、こんにちは!」と明るく元気に声をかけてくれます。白髪頭の太めオジサンは照れながらも嬉しく、「こんにちは」と応えながら気分も若返り、取材を終える頃には確実に10歳は若くなりました。 体験学習もそろそろ終了。まとめのスピーチを行う三村校長 次回2日目は9月16日。超難解な銘仙ウルトラクイズコーナーなどもあるとのこと。本日はフリーペーパー・”アミーゴ”の群馬よみうりさん、朝日学生新聞社さん、上毛新聞社さんなどのメディアも取材。様々なメディアを通じて伊勢崎銘仙ブレイク中です。各記者さんと名刺交換や情報交換し、次回の都合を尋ねると、皆さんスケジュールがタイトの様子。 私も次回の取材はどうしようかと考えていると、帰り際、金井さんから「次回も来てね」と一言。 「・・・」 次回のことはさて置いて、以上、一日目のレポートでした。(2014/9/10 記) |
第二日目:開会。会場は多目的ホール |
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四ツ葉学園中等教育学校のグローバル体験学習「伝統文化」、世界に誇る日本のシルク文化 〜伊勢崎銘仙から学ぶ〜の第二日目は9月16日の午後。前回と同じく第3学年の生徒128名が多目的ホールに集合し、杉原さん、金井さん、小澤さん始め7名の講師陣ご挨拶の後、早速に着物着用体験。 今回は女子生徒18名、男子生徒5名が体験します。男子生徒は今回も希望者多数の狭き門。・・・ところが、この後、男子生徒対象に面白企画も。 |
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第3学年の生徒128名が全員集合し、開会です。 |
ハイ、女子の希望者、こちらに並んで〜♪ |
男子希望者はこの中から5名選出。厳しい競争率。 |
第二日目:伊勢崎銘仙を着てみよう |
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一日目同様に伊勢崎銘仙の着物を着て、素材の感触や着心地、楽しさなどを体感。7名の講師陣の手際良い着付けで、次々に仕上がって行きます。 | |
着付け役の皆さん大忙し。近付いてみれば汗だく。お疲れ様です。 |
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NHKの連続テレビドラマ「花子とアン」の 花子の着物を着るのは小浦先生。 生徒たちから、「先生、可愛い〜♪」 |
第二日目:着物を着ない生徒たちは羽織を体験 |
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銘仙の着物を着なかった生徒たちは羽織を着用。今回もたくさんの色や柄の羽織が用意されました。 | |
「それ行け〜!」 「ちょいと失礼」、いなせな若衆3人組 |
様々な色や柄の伊勢崎銘仙の羽織 「これ似合ってる?」「うん、結構いい線行ってる」 |
羽織組はホールに座って、着物組の着付け完了を待ちます。 白と黒の制服姿の開会時の風景が、一挙に華やかに変わりました。 |
第二日目:女子生徒たち、着付け完了 |
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着付けを終えて、ニッコリ笑顔。可愛い♪ 金井さんも着付けお疲れ様です。 髪の毛を直して最後の仕上げ、ハイ、OK |
第二日目:男子生徒、伊勢崎銘仙を着る♪ |
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二日目の面白企画。男子生徒たちにも伊勢崎銘仙を着た女性の心を理解してもらおうと、代表者3名が伊勢崎銘仙を着てみることに。着てみるとこれが良く似合って、女子生徒達からも「可愛い〜」と連発。着付けの皆さんも着付けしながら「似合う、似合う、でもこれで癖にならないでね」。 | |
お〜、似合う、似合う♪ 同級生と盛り上がる会話 |
色っぽいポーズで一枚 |
ハイ、リボンを付けますね♪ 楚々とした女性の仕種をして会場を笑わせる3人。でも、実際、着物姿が様になってる。 |
第二日目:着付けを終えて一堂整列 |
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着付けを終えた女子生徒18名、男子生徒5名、女装男子3名が整列し、会場は華やかで明るい雰囲気に包まれます。女装男子3名の女子になり切った一挙手一投足が会場の笑いを誘い、和やかな空気が流れます。ちょうど学園祭のような雰囲気です。 | |
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第二日目:伊勢崎銘仙の学習とウルトラ難解クイズ |
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銘仙着用体験の次は銘仙の学習とウルトラ難解クイズの時間。 銘仙学習の講師は伊勢崎明治館の小澤さん。銘仙や絣の定義、先染め、後染めを講義。「友禅などを伝統的な着物とするならば、伊勢崎銘仙はファストファッション、ちょうどユニクロみたいなもの」と伊勢崎銘仙が庶民派ファッションだったことを説明。 ウルトラ難解クイズは全10門。出題は伊勢崎明治館の金井さん。これが本当に超難問。会場の生徒たちや先生も頭を抱えます。後日問題詳細を紹介したいと思いますが、今回は省略。高得点者には伊藤正義さんの刀刻をデザインしたクリアファイルをプレゼント。この難問に何と8問正解した生徒がいて、会場からは感嘆の声があがります。6問以上正解した生徒もたくさんいました。ちなみに、伊勢崎銘仙のレベルを上げたと自認する私の正解は6問でガッカリ。更に精進しましょう。 |
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回答する杉原さん、金井さん、小澤さん(左から) 伊勢崎銘仙生地見本で織りの勉強 |
資料を示しながら丁寧な解説 生徒たちからの質問コーナー |
第二日目:感想やお礼、講師ご挨拶 |
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最後まで会場を楽しませてくれた伊勢崎銘仙女装男子生徒。生徒たちも講師陣も大爆笑♪ |
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生徒代表のお礼 |
杉原さんご挨拶 |
司会・進行は「花子」姿の小浦先生でした。お疲れ様でした。 |
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取材を終えて二日間に亘って行われた四ツ葉学園中等教育学校のグローバル体験学習「伝統文化」、世界に誇る日本のシルク文化 〜伊勢崎銘仙から学ぶ〜。二日間とも最初から最後まで取材させていただき、地元が誇る産業文化・伊勢崎銘仙を学ぶ機会を設けたこと、そしてそれを素直に瑞々しい気持ちで学ぶ生徒たちの姿に感動しました。大正から昭和にかけて、東京や関西圏を中心に人気が広まった伊勢崎銘仙。ややもすると、伊勢崎に生まれ育った伊勢崎人たちでさえその華やかでお洒落な姿を知りません。機会を掴んでは現在を生きる地元の中高年の人に尋ねていますが、大方が、「焦げ茶や灰色、青や濃紺一色の生地に井桁や水玉などのパターン柄、一言で言えば地味な着物」と答えます。 何で今まで、伊勢崎市の教育現場で伊勢崎銘仙を学ぶ機会がなかったのか、今更ながら悔やまれますが、過去はとにかく、日本の着物文化を一世風靡した伊勢崎銘仙を、今このように若い生徒たちが学ぶ機会を得て、素直に積極的に学ぶこと、正にこの事業の目的である「地域の文化を深く知ることでアイデンティティーを確立する」ための役割を担った、頼もしい事業であると実感しました。 その主目的の他に感じたこと。生徒たちが明るい、屈託がない、素直、元気、フレンドリー。 「現在の中高生の年齢は色々な面で難しい」との先入観を持ったまま取材に臨んだのですが、第一日目にその先入観は払拭され、二日目も同様でした。学年主任の先生や三村校長にその理由を尋ねるも「たまたま生徒たちに恵まれただけです」と謙虚な返事が返って来ます。6年間一貫教育の長所かも知れません。正確な分析は今後の関心ごととして別の機会に譲るとして、爽やかで非常に楽しい二日間の取材でした。(2014/9/18 記) |
会場を飾った伊勢崎銘仙 |
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